効果的なストーリーテリングの活用シーン

効果的なストーリーテリングの活用シーン

映画やプレゼンテーション、プロダクトなど様々な場面にストーリーを持たせることの重要性については前述してきました。
ストーリーは、構造そのものは大きく変わりませんが、目的によって感じてもらいたいストーリーは変わってきます。
ここでは、大きく3つの目的に分けて事例とともにストーリーを解説していきたいと思います。

コンセプトストーリー

コンセプトストーリーとは、その名の通りブランドやサービスが持つコンセプトの物語になります。サービスの提供側が共通で認識していることであり、顧客が抱くブランドイメージでもあり、サービスを作っていくなかでの基礎となるストーリーと言えます。
例えば、スターバックスには「Third Place(家庭でも職場でもない第三の居場所)」という有名なコンセプトがあります。これは、コーヒーをただ提供するのではなく、ビジネスマンにとって心安らげる空間やコミュニティを提供するという意味があります。
そのようなコンセプトがあると必然的に
・都会の立地の良い場所に存在する
・くつろげる店内の空間
・こだわりの商品や心地よい接客
というサービスの中身も共通認識でイメージできます。
コンセプトストーリーがあることで、恐らく社内でもビジョンがずれるようなことも防げるでしょう。

コンセプトストーリーの構造

基本的なストーリーの流れや構造としては、前述した「ストーリーアーク」がベースになります。
ストーリーアークで説明した7つのポイント毎にコンセプトストーリーの構造を理解していきましょう。

1.状況説明

潜在的なニーズを持ったユーザーに対して、その人の現状を伝えることが重要になります。
ペルソナでユーザーを明確にし、その人が望んでいることや悩んでいることを自分ごと化させることで、共感を生むことができるでしょう。
例えば掃除機でおなじみの「dyson」のホームページを見てみましょう。
「dyson」といえば、
・吸引力の落ちない掃除機
・スタイリッシュなデザイン
といったブランドイメージを持っている人が多いと思われます。

ダイソン

ホームページに記載されている内容が、
「1978年ジェームズダイソンは、当時使っていた掃除機の機能が低下することに不満を持ちました。」
といったように1978年に同じ悩みを持っている人に共感を呼ぶ展開になっていることがわかります。

2.問題発生

コンセプトストーリーにおける問題発生とは、ユーザーが抱えている問題やニーズになります。ユーザーは自らが抱えている問題を自覚しているとは限りませんので、場合によってはストーリーの中で示してあげることも重要になってきます。
先ほどの「dyson」のホームページにはこのような内容が記載されています。

「掃除機を分解してみると紙パックがゴミで目詰まりして、吸引力の低下を起こしているのだと気付きました。」
当時の掃除機は全て紙パック式であり、このような問題をユーザーが自覚していたとは思えません。ただし、ユーザーにはこのようなストーリーが伝わります。
「掃除機の機能が低下するのは嫌だ」「機能が低下するのは掃除機の紙パックに原因がある」

3.盛り上げ

ここでは問題を解決するためにどのようなプロダクトやサービスであるか、といった方向性を示すことでユーザーに伝わりやすくなります。

「解決方法を探し求めていたある日、製材工場の屋根に木くずと空気を分離するサイクロン装置を見てひらめきました。」
紙パック式に変わるサイクロンを使った新しいタイプの掃除機、といった方向性が伝わってきます。

4.危機

ここでは、ユーザーの心理的なハードルや類似商品など、ネガティブな要素を洗い出します。
そのプロダクトやサービスは本当にユーザーにとって必要なのか?と問いかけることでプロダクトやサービスの魅力が研ぎ澄まされてくるでしょう。

「しかし、同じ原理が掃除機にも通用するでしょうか。」

dysonは、これまでにないサイクロン式掃除機の開発に着手しようとしました。
しかし、それは実現可能なものかどうかは未だ分からないものでした。

5.クライマックス

訪れた危機を解決し、ユーザーが抱えたハードルを乗り超える部分がクライマックスです。他のプロダクトと違う強みや、苦悩や圧倒的努力を経た結果がユーザーの感性を刺激します。

「5年と5,127台の試作品を経て、ジェームズは世界初のサイクロン掃除機の開発に成功しました。」

圧倒的な試作品の数と年月が、いかにして魅力的な商品を生み出したかを物語っています。
「世界初の吸引力が低下しづらいサイクロン式の掃除機が誕生」だけでは、ストーリーは平坦なものとなり、プロダクトにそこまで引き込まれなかったかもしれません。

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サイクロン式掃除機の開発に成功したdysonは、当時モノづくり大国だった日本で性能が認められ、デザイン見本市で賞を受賞するなど、性能面とデザイン面両方において優れたプロダクトであることが証明されました。

6.落とし込み

クライマックスを終えたユーザーは、何かしらの感想を抱くでしょう。プロダクトの価値を知ったユーザーはどのように思うでしょう。
このプロダクトで何ができる?評判を知りたい?店舗に見に行きたい?
様々な考えがユーザーの頭に出てきますが、いざ実行に移すのは別のオリジンストーリーが役割を担うのでここでは、あくまで「イメージ」に留めておきます。
コンセプトストーリーの中で唐突に「購入はこちら」となると現実に戻され、ストーリーアークはクリフハンガーとなり多くの離脱を生む原因となり、印象も悪くなってしまいます。

7.エンディング

企業にもユーザーにも目的がありす。エンディングでは、それぞれの目的が重なり、両方の目的を満たすストーリーにしなければなりません。

dc01

dysonのホームページにはこのように記載されています。

「100%の吸引力を100%持続させる史上初の掃除機」
吸引力が落ちない掃除機を持ったユーザーは、日々の掃除の不満が劇的に改善されることを想像するでしょう。
さらには、掃除という行為にスタイリッシュなデザイン性を加えることで、さらに不満は軽減されるはずです。

ジェームズダイソン

ジェームズダイソンはこのように言っています。

「誰もが感じるように、きちんと機能しない製品に対して不満を感じます。デザインエンジニアとしてその不満を解決する方法に取り組みます。発明と改善がダイソンのすべてです。」

企業のミッションと目的を達成したユーザーが感じるであろうことが一つの線で結ばれています。

コンセプトストーリーはあらゆるプロダクトやサービスの土台となり、指針となります。
ターゲットユーザーやプロダクトの本質を見極めることにも非常に有効となるでしょう。
もちろん商品開発、組織構築、マーケティング戦略など様々な場面でも活用することが可能です。

オリジンストーリー

オリジンストーリーとは潜在顧客が顕在化するまでのストーリーになります。
ユーザーは前述したコンセプトストーリーにより、プロダクトやサービスに対して何かしらの印象を持っています。企業側はユーザーが抱いている印象を活用しつつ、行動に移すストーリーを展開していきます。
ユーザーがコンセプトストーリーで抱いた「頭」の中の印象を使って、
会員登録や商品の購買、資料請求やアプリインストールなど様々なプロダクトに求められるストーリーとなります。
プロダクトを知り、何かしらの印象を抱いたユーザーは、どのようにしてプロダクトにたどり着き、
何をハードルに感じ、最終的にどのような行動を起こすでしょう?

オリジンストーリーの構造

ストーリーの流れや構造は、他のストーリーと同じになります。
ただし、ストーリーアークの7つのプロットポイントの中で、他のストーリーと考え方が共通のものと、そうでないものがあるため注意してください。

1.状況説明

もしもコンセプトストーリーが出来上がっているのであれば、ここは考える必要がなく、
まったく同じものを採用しましょう。

2.問題発生

こちらもコンセプトストーリーと同様に、ユーザーが抱えている問題やニーズになります。

3.盛り上げ

ユーザーはどのようにプロダクトを見つけ出すのでしょうか。
ここでは、実際の行動をベースにどのようなチャネルからユーザーがプロダクトにたどり着くかを明確にします。
・SNS上での友人からの口コミ
・検索エンジンで「XXXX」と検索する
・招待メールを受け取る
・アプリストアのランキングを見る
・テレビCMで見かける

例えば、子供が中学受験を控え成績に不安を抱えた母親は、テレビCMでとある有名サービスに接触します。そのサービス名で検索をします。

トライ

このようにペルソナのカスタマージャーニーを明確化させることで、具体的にどのようなストーリーを組み立てるべきかが見えてきます。

4.危機

顧客が行動を起こすにあたってのハードルはどのようなものでしょうか。
類似商品の存在?価格?品質?保証内容?
様々なものが考えられますが、ここで気をつけたいのは、平坦なハードルではストーリーとして単調なものとなってしまいます。
映画などで「手に汗握る展開」と言われるように、ハードルは高く、緊張感のあるものほどストーリーとしては引き込まれやすいものと言えるでしょう。

危機はコンセプトストーリーで決めたものをそのまま採用するケースもあります。

5.クライマックス

ユーザーは頭の中にあったプロダクトの価値を、ここで初めて目にします。
目的を達成するために身を乗り出してきた、ユーザーにはどのようなメッセージでどこに導くのがよいでしょうか?

トライお問合せ

先ほどの子供が受験を控えた母親を例にすると、上記のページでは、
自分ごと化されるような質問をページ上部で投げかけることで気になる状況を演出しています。

6.落とし込み

実際の価値を目にしたユーザーは、そのプロダクトやサービスを使うことで自分の課題が解決できることが分かりました。
企業側は、ユーザーに取ってもらいたい行動があります。
上記の例でいうと「料金を問い合わせる」行動を起こしてほしいことがわかります。

ここでは、企業側の思いとユーザーの行動にギャップが生まれないかがカギとなります。
・問い合せするには、まだ情報が足りない
・どんな会社なのか分からない
・サービス品質に不安要素がある
など様々な要素が考えられます。
企業とユーザー双方の温度感が一致するようなストーリーで行動を促しましょう。

7.エンディング

企業とユーザーはそれぞれの目的を達成します。
オリジンストーリーは、ユーザーに実際に行動を起こしてもらうといった、効果が問われるストーリーです。
しかたって各プロットポイントをデータと照らし合わせながら改善を重ね、進めていくことをおすすめします。
ユーザーが抱えている問題は、そもそも解決の必要があるでしょうか?
コンセプトストーリーを元にオリジンストーリーを作る際にはチームで以下のような議論が必要となることがわかります。
・潜在ユーザーはどのようにプロダクトやサービスに出会う?
・ユーザーには最初にどの価値を伝える?
・プロダクトを夏買って何ができるかを見てもらう?
・何ができるかを見てもらった後にどこに動いてもらう?
このような疑問に答えを出すことでオリジンストーリーが出来上がってきます。

ユーセージストーリー

ユーセージストーリーは、ユーザーがプロダクトを使っていく過程のストーリーになります。
オリジンストーリーで顕在化したユーザーが、全く企業側の意図していない行動を起こしてしまっては、いずれ離脱してしまうことでしょう。

例えば、多くのスマートフォンアプリでは、インストール後にシンプルなチュートリアルを通じてユーザーに行動を促しています。
ゲームを例に取ってみても同じです。ガイドのようなキャラクターが、ゲームでできる一通りの動作を誘導することで、スムーズに使い方を理解できるようになっています。
他にも商品を購買するフォーム画面等においても、ステップバイステップで入力項目を誘導していくことでユーザーの離脱を防ぐことに貢献しています。

ユーセージストーリーの構造

同様にストーリーの流れや構造は、他のストーリーと同じになります。
データと仮説を元に、細かな離脱改善だけでなく、長いスパンでリピートしてもらうためのストーリーなどストーリーの長さは様々なものに対応しています。

1.状況説明

コンセプトストーリー、オリジンストーリーが出来上がっているのであれば、ここは考える必要がなく、まったく同じものを採用します。
ユーザーはオリジンストーリーで、どのようなことができるプロダクトであるかを目にし、目の前にプロダクトがある状態です。
何故このプロダクトの目の前にいるのかを改めてユーザーに分かりやすく伝えるとよいでしょう。

デザインに詳しくないユーザーが自社のWEB広告のバナー制作を依頼され、
途方にくれていました。そんな中、知人からの口コミで「Canva」といったサービスの存在を知りました。
「このサービスなら自分の問題を解決できる」

canva

2.問題発生(きっかけ)

こちらもコンセプトストーリーで明らかにした問題がベースとなります。
問題に対してユーザーは何があれば行動を起こすきっかけになるでしょうか?
上記では、ユーザーに改めて何ができるかといった状況説明をするとともに、SNSアカウントまたはメールアドレスで登録すれば、問題解決に近づけるといった促しがあることがわかります。

3.盛り上げ

ここでは問題を解決するステップの紹介がメインになります。
ユーザーが自分の抱えている問題を解決するには、どのようなステップが必要なのか?
そしてそのステップは自分の想像を上回るほど、簡素で感動できるものが良いでしょう。

「Canva」を例にすると、登録後に以下の画面が出てきます。内容はこのようなものです。
「23秒で美しいデザインを作る方法を紹介します。」
「行う動作は、検索・ドラッグ・ダウンロードのみです。」

クイックガイド
見出し

4.危機

問題を解決するにはどのようなステップをこなせば良いかユーザーは理解しました。
しかし、このようなハードルがまだ残っているかもしれません。
・登録プランによって利用制限がかかっている
・使いにくい
・理解ができない

「たった23秒の使い方ガイド」
「ガイドされていないボタンも沢山ある」
もしかすると、ユーザーはこのサービスを使いこなせる自信が失われつつあるかもしれません。
そんな中あるページが登場します。

5.クライマックス

ユーザーは、ここで危機を乗り越えます。
ここでは、問題が解決されるだけでなく、ユーザーの記憶に残るものでなければなりません。
すなわち「価値を体験してもらう」必要があります。

ガイドを見終わり、使い方に不安の残るユーザーに、下記のような画面が現れます。
「数分でデザインのプロになろう」
再度チュートリアルが現れます。もちろんスキップすることも可能ですが、
チュートリアルを進めていくと、
ガイドでは紹介されなかった新しい機能などサービスの価値を体験することになります。

「なるほど!こういう使い方もできるのか」
価値を体験したユーザーにこのように思ってもらえたら、記憶に残ることでしょう。

6.落とし込み

価値を体験したユーザーは、早速先ほどチュートリアルで体験したことを実践します。
ここで気をつけたいのは、体験してもらった後もそのままで終わらせないことです。
必ず次に何をすれば良いのか?がユーザーに分かるように行動を促しましょう。

先ほど行った手順で自分のオリジナルデザインを早速作ってみる。

7.エンディング

ユーザーは目標を達成し、状況が改善されています。
目標を達成すると、一度家(HOME)に帰るものですが、そこで終わりで良いでしょうか?
映画を想像してみて下さい。
成長して家(HOME)に戻ってきた主人公(ユーザー)は次のストーリーへ踏み出していることでしょう。

HOME画面に戻ってきたユーザーは、自分のHOME画面に作成したデザインが掲載されていることに気付きます。当初の課題を解決したユーザーは、「チームを作成」または「デザインを学ぶ」などの新しいストーリーへ旅立つかもしれません。

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