ストーリーテリングとは

歴史

ストーリーテリングの歴史を紐解けば、人類に言葉が生まれた時代にまで遡ります。

大昔の古代エジプトのピラミッドを想像してください、ピラミッド内の壁画にミイラの作り方や稲作をしている人たちが描かれているものを見たことがある方は多いでしょう。そう言ったものも古代エジプト人が壁画や言葉を使って仲間や家族へストーリーテリングを行なっていたのかもしれません。そうですストーリーテリングの正体は気づかぬうちに身についており、頻繁に使用している方も多いコミュニケーション能力なのです。ただ改めて概念を理解し、わかった上で使用するとまた効果は変わってきます。

 

ストーリーテリングの構造を理解する

ストーリーには構造があります。始まり、中間、終わり。この3つの要素から構成されております。※図1

次にこの構造内に図2のように時間という曲線を描くとストーリーアークと呼ばれる構造が出来上がります。ストーリーアークには図3のような7つの要素で構成されています。

① 状況把握

② 事件や問題発生

③ 盛り上げ

④ 危機

⑤ クライマックス

⑥ 落ち

⑦ エンディング

 

①状況把握

・ストーリーの全体像、世界観を説明します。このストーリーの目的・ゴールをここでユーザーに知らせます。また重要な要素としてはユーザーに「共感」をここでしてもらう必要があります。いかに「共感」をしてもらうことにより、これからのストーリーへの引き込み方が違ってきます。人間は「共感」をすると「自分事化」していきます。「自分事化」すると「想い入れ」が生じ感情を動かすことが可能となり、感動へと導く事が可能となります。人は感動するとそのストーリーを記憶し、人に話したくなり、口コミが生まれていきます。

②事件や問題発生

・ストーリー内により引き込むために、事件や問題を発生させユーザーに 不安感を与え、より興味を持たせていきます。このパートでは①で「共感」を持ってもらっているはずなので「自分事化」されております。そうするとユーザーはそのストーリー内で起きた事件や問題をどのように解決するか想像し始めます。このパートで重要な要素は①で生み出した「共感」を活用し、ユーザーに「想像力」を使ってもらう事です。

③盛り上げ

・問題発生の後は、その問題を乗り越えるべく動き出します。ここからはユーザーは、ただ観たり聞いたりするのではなく、感じていきます。②で「自分事化」し「想像」してもらっているので、どんどんストーリーの未来を予測していきます。その予測にあっさり応えてしまうとありきたりなストーリーとなってしまうので、ここでは苦悩と葛藤を描き続けます。1番良いシーンは最後まで取っておいたほうが良いのです。

④危機

・盛り上げに続くストーリー内の最大の危機的状況です。③での苦悩や葛藤も思うような成果になかなか結びつかず、この危機的状況の根本問題を解決しないことには前に進めません。言い返せば今までの苦悩や葛藤は無駄ではなく、問題解決する根本が見えた瞬間でもあります。このパートの重要点はユーザーの想像力の先をいきましょう。ユーザーの予測の先を行くことにより没入させます。

⑤クライマックス

・ストーリーアークの頂上となるので、このストーリーの1番の盛り上がりポイントです。ユーザーにこのストーリーを聞いて観て良かったと思わせなければなりません。①で「自分事化」し、②で「想像力」を覚え、③でストーリーと共に「予測」し、④で予測を上回る危機的状況に追い込まれ、このパートでその応えを一気に回収していきます。感動まで導くにはユーザーの想像力の上を行かなければなりません。ユーザーはこの部分が聴きたい観たいがためにここまで付き合ってきたので期待に応えなければなりません。

⑥落ち

・物事には何事も始まりと終わりがあるように、ストーリーにも終わりが必要で、ここは終わりを知らせるパートです。例えば大好きな女性と結婚をするというラブストーリーで幾多の苦難を乗り越え、プロポーズをし、ようやくOKをもらいました。ここで終わりだと観客は満足するでしょうか?いいえしません。観客のインサイトは幸せな2人の結婚生活を観たいというものがありますので、しっかりそこまで描かなければ満足しません。ここでユーザーは①の状況把握と結びつき、観客は結果だけを観たかったのではなく、そこに行き着くまでの「プロセス」も重要だと気づきます。このパートでエンディングへ導いて行くためのストーリーのまとめが描かれていきます。

⑦エンディング

・ストーリーの最終章です。ここまでくるとユーザーはこのストーリーを全て体験し終え、まるで自分の身に起きたことのように記憶します。おおよその場合ストーリーは成長をベースに描かれますので①で出てきた状況と変わり成長しているはずです。ここでの重要なポイントはストーリーを通してユーザーが「自分事化」しそのストーリーを体験した気分になれたかと言う部分です。ユーザー体験がストーリーを持ちることによりユーザーの記憶へと刻み込みます。

 

 

 

 

 

 

実際の映画で解説

・第89回アカデミー賞で6部門受賞、史上最多14部門にノミネートされた、何かと話題の映画「ラ・ラ・ランド」をストーリーテリング流に解説していきます。※ネタバレあります

 

■登場人物

・ミア

ハリウッド女優を目指す売れない女優。女優業では食べて行けずウェイトレスのバイトをしています。

 

・セバスチャン(セブ)

ジャズバーを開くことを夢見ているピアニスト。こちらもレストランでピアノを弾くバイトをしています

 

① 状況把握

【あらすじ】

大渋滞のハイウェイで2人は出会います。ミアの車の後ろにセブが並びます。ミアはオーディションの練習で台本に没頭していて、車が進んだことに気がつきません。前が空いたにも関わらず、進めないことに苛立ちを覚えたセブはミアの車にクラクションを鳴らしながら、横から無理やり抜いていきます。おまけに中指を立てながら追い抜いていきます。最悪の出会いが二人のファーストコンタクトです。この冒頭のシーンの間に音楽がかかり渋滞中のハイウェイの車から人が飛び出してきて、車の上で踊り出します。

 

【解説】

渋滞中のハイウェイは、なかなか前に進めない人生で行き詰っている2人の現状を描いております。歌と踊りが初めの段階で盛り込まれているのもこの映画はミュージカルだと伝えるためです。

また、この映画のタイトルは「ラ・ラ・ランド」です。英語にすると「LA・LA・LAND」でLAとはロスアンゼルス市のことです。ロスアンゼルス市には夢を叶える街ハリウッドがあります。この物語は2人の人生を通した夢を叶える物語なのです。

 

② 事件や問題発生

【あらすじ】

ミアがオーディションに失敗し、落ち込みながら歩いていると、ふとピアノの音に惹かれレストランに入ります。そのピアノの演奏者はあの必要以上にクラクションを鳴らし中指を立ててきたセブでした。一方セブはピアノ演奏を終えレストランのオーナーと選曲について揉めています。セブはジャズピアノを弾きたくて雇われたつもりが、オーナーのオーダーは一般受けするものばかりでした。ちゃんとオーダーに従うと言いながら自分好みのジャズピアノを弾いたことでクビになってしまいました。

出会いは最悪だったものの、セブの弾く美しいピアノの音に心打たれたミアは、セブに素晴らしかったと伝えようとするも、クビになったばかりのセブは聞く耳も持たずにお店を出て行ってしまいます。

 

【解説】

二人の夢から遠ざかるような出来事が起きます。ミアはオーディションでヘマをやり、セブはジャズピアノを大衆の前で弾ける環境がなくなってしまいます。また二人の恋が始まりそうで始まらないと言うジレンマも描かれております。

 

③ 盛り上げ

【あらすじ】

またまた二人は再会を果たします。パーティー会場でロックバンドのキーボード担当をしているセブをミアは見つけ、曲をリクエストします。セブもミアのことを覚えており当時した非礼を詫びます。この出会いが二人の距離を近づけミアのバイト先で将来の夢などを語り合います。ミアは女優だった叔母を尊敬して女優を目指していることを語ります。また脚本も手がけていきたい夢も持っています。セブも自分の夢であるジャズバーのオーナーになりもう一度ジャズを復活させたいとの想いをミアに熱く語ります。こうしてお互いの夢を追うもの同士惹かれあい恋人同士になります。

【解説】

ようやく二人はまともな出会いを果たし、実は夢を追う似た者同士だと言うことに気づき恋に落ちますが、このストーリーはあくまで夢を叶える物語なので恋愛がゴールではありません。よって二人の恋がうまくいきようが、物語は夢に向かって進んでいきます。

 

④危機

【あらすじ】

恋人同士になってからも二人は夢を諦めません。お互いの夢にアドバイスをしながら良い関係を築いていました。ある日セブに転機が訪れます。セブの友人がジャズ風バンドのキーボード奏者を探していてオファーが飛び込んできます。ただあくまでジャズ風でセブが目指している本格的なジャズではありません。セブは夢を取るかミアとの生活取るかとう二択に迫られます。ミアと一緒になる為にも将来の自分の夢を叶える為にも安定した収入は必要だと自分にいいきかしバンドに加わります。セブは夢を諦め妥協していきます。ただ裏腹にバンド活動はどんどん順調に進んでいきます。ある日、ミアはセブのバンドのライブに行きます。バンドはセブの望んでいない音楽だと言うことに気付き、自分との生活のため夢を諦めたことを知ってしまいます。自分も夢を追いかけている身なので夢を諦めると言うことがどれほど辛いことかよくわかり、ましてや自分のせいで夢を諦めさせてしまうと言うことはミアにとっては耐え難いものでした。

それを機に二人はうまくいかなくなってしまいます。すれ違いの生活が続き、必ずいくと約束したミアの大切な1人舞台にもバンド活動のせいで間に合いませんでした。さらにその舞台でミアはほとんど観客が入らず自信を失ってしまいます。以前に二人は互いの夢に対してアドバイスを行っており、女優と脚本家を目指しているミアには1人舞台が良いのではないかと案を出しのはセブでした。完全に心が折れてしまったミアは夢を諦め故郷に帰ってしまいます。

【解説】

セブに先に危機が訪れます。夢か愛かと言う究極の2択の前に、一度夢を諦めてしまいます。またそれに続いてミアの心も夢を諦めてしまう状況に追い込まれます。この物語は二人の夢を叶えることがゴールとなっているので、夢から一番遠ざかったこのシーンが一番の危機的シーンとなります。

 

⑤ クライマックス

【あらすじ】

数日後にミアの居なくなった部屋に、このあいだの1人舞台をみた業界人からハリウッドへのオーディションのオファーが届きます。これを聞いたセブは大喜びでミアの実家まで駆けつけ、オーディションを受けるよう説得します。心の折れたミアはなかなか受けようとしませんが、熱いセブの説得に受けることを決意し、見事合格します。ところがミアは撮影のためパリへ行かなければなりません。セブは夢を叶えた恋人に感化され自分のジャズバーを開く夢を追いかけるため別れを決意します。

 

【解説】

先にミアが危機を乗り越え自分の夢への切符をつかみます。それに応えるようにセブもミアと別れを決意し夢1筋に追いかける決意をします。この物語は二人の夢を叶える物語なので恋愛は二人の成長を促す要素になりません。たとえそれが別れだとしても夢を叶えるための成長への要素とあればそのステップを踏まなくはなりません。

 

⑥落ち

【あらすじ】

月日は経ち5年後。ミアがバイトをしていたワーナー・ブラザースカフェにハリウッド女優として成功を収めたミア入って行きコーヒーを頼むシーンから始まります。シーンは代わり可愛い子供と夫の待つ幸せな家に入って行きました。しかし夫はセブではありません。ミアは夢を叶え幸せな家庭も手に入れたました。

セブも夢を叶えジャズバーを経営しておりました。セブのお店にはミアの映画ポスターも貼ってあります。ただ別れてからもう会っている様子はありません。

 

【解説】

お互い夢を叶えます。一見ミアが幸せな家庭を築いているので対照的に見えてしまうのですが、この物語は夢を叶える物語なので二人とも夢を叶える落ちが描かれてます。

 

  • エンディング

【あらすじ】

ミアは夫と共に地下にあるジャズバーにふらっと立ち寄ります。お店の看板を見ると驚愕します。以前セブと互いの夢にアドバイスをした際、セブがお店をオープンした時のためにミアが作ったロゴが使われているではありませんか。お店の中へ入っていくとセブがいます。セブもミアに気付きます。二人は二人でしかわからないくらい見つめ合います、そしてセブは二人の思い出の曲を演奏し出します。そうすると当時の楽しかった思い出や、もし別れずにいたらどうなっていたかなど二人は言葉を交わさずにセブの演奏を通して妄想を繰り広げます。ミアはセブと結婚していたら女優になっていなかったかもしれない、セブもミアと結婚していたらこのジャズバーを持てなかっただろう。そんな妄想が曲と共に終わります。ジャズバーは拍手に包まれながら二人は互いに見つめ合いふと微笑みかけます。

シーンが変わり物語の始めの渋滞していたハイウェイがスムーズに進んでいる映像が映し出されます。

 

【解説】

なんども繰り返しになりますが、この物語は二人の夢を叶える物語です。恋愛は夢を叶えるための成長の要素に過ぎません。一見ラブストーリーとして見てしまうと甘酸っぱくほろ苦くなってしまいますが、二人が成長し夢を叶えた、この物語はハッピーエンドという捉え方が良いでしょう。最後のシーンで①の状況把握に出てきた渋滞中のハイウェイ=現状うまくいっていない人生が解消され、快適なハイウェイを駆け抜けていく様がラストシーンなのがその理由です。

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